JIS X 0213:2004の「解説」に突っ込んでみる

  • IVS本に突っ込んでいたら、その記述の元となっているJIS X 0213の「解説」の誤りらしきものを発見、というパターン。3つたまったので、まとめてメモしておく。

3.1.2 この規格の2000年版、JIS X 0208及びUCSに同一の字形があった815字

  • 「これら815字のうち5字には、簡易慣用字体が示されている」とあるが、815字のうち簡易慣用字体が示されているものは7字ある(下図)。
  • このうち「ここで簡易慣用字体として示された五つの字形と同一の字形が、この規格の2000年版、JIS X 0208及びUCSに例示字形として示されている」に該当するのは、「頴撹曽桝弯」の5字。
  • 「815字」の内訳については「815文字の計算方法とリスト」を参照。


3.1.4 微細なデザイン差を変更した39字

  • 「表外漢字字体表に示された1022字のうち39字については、表外漢字字体表の意味でのデザイン差が存在した」とあるが、「表外漢字字体表の意味でのデザイン差」であれば、「39字」にはならない。
  • まず、「39字」を以下に示す。小塚明朝で表現しているので、違いを区別できない例も存在するが、その場合、文字をグレーにした。


  • 表外漢字字体表の基準では、「39字」に加えて以下の30字もデザイン差となる。しかし、これら30字は「解説表5」ではなく、「解説表11 包摂の範囲内で字形を変更した文字」に含まれている。
  • すなわちここでは、表外漢字字体表の基準ではなく、(当時の)常用漢字表の基準によって字体差・デザイン差を判断しているものと思われる。
  • ただ、解説表7の「芦」の例だけは、表外漢字字体表の基準を用いないとデザイン差にはならない。
  • そのようなわけで、ねじれていてわかりにくいが、比較的シンプルに修正しようとするなら、①「3.1.4」の冒頭の文から「表外漢字字体表の意味での」という一節を削除する、②「芦」の例を「微細なデザイン差を変更した」グループから外す、ということになるだろうか。


3.1.5 個別デザイン差の形がUCSに存在する7字

  • 「個別デザイン差の形がUCSに存在する7字」については、「UCSでは、字体表の備考欄に個別デザイン差として示された形と同一の形も、異なる符号位置に示している」とはっきり書かれている(強調は引用者)。
  • しかし、この7字のうち2字の「個別デザイン差の形」は、UCSの異なる符号位置には存在しない(下図)。
  • 解説表8の「注**」も先に引用した部分と矛盾しており、混乱を際立たせている。