石井茂吉はおっぱいの夢を見るか
- この「雌」の字、IPAmj明朝では区別してるんだけど、どこが違うかわかる?
- んー。無理に違いを探すなら、右上のあたりですかねー。
- 確かに、右側の「雌」のほうが、おっぱいが小さい。
- おっぱい? 字源的にそうなんですか?
- いや、ノリでそう呼んでみただけだが。
- ……はあ。
- で、このおっぱいの小さい「雌」がどこから来たかというと、戸籍統一文字なんだけどね。
- あー、戸籍統一文字の時点で、すでにおっぱいのサイズが違いますね。
- ところがこれ、画数の情報を見ると、左は14画で、右は13画なんだよ。
- ん?
- そもそも、おっぱい差は字体差ではなくデザイン差だから、そんな違いで戸籍統一文字に登録されるわけがない。
- おっぱい差?
- おっぱい差はサイズの差であって、骨格の差じゃないってこと。ポイントは、実はおっぱいじゃなく偏のほうで、3画目がそのままハネるかどうかの違いだな。
- うーん。そう言われて見直してみても、右側の13画のほうがぜんぜん13画に見えないんですけど。強いて言えば、むしろ左側の14画のほうがまだ13画っぽく見えなくもないかも。
- まあ、明朝体の様式のせいで画数がわかりにくいのは仕方ないんだけど、それにしてもおかしなことになってるよね、戸籍統一文字もIPAmj明朝も。
- ていうか13画の「雌」って必要なんですか? これって、だれかがたまたま手書きした形ですよね?
- 13画の「雌」を載せてる漢和辞典があると?
- さすがー。
- 遡ると、康熙字典が隹部の5画のところに「雌」を載せていて、大漢和とかはそれを尊重して13画としてるってことなんだろうね。
- なるほど。でも、明朝体の様式とは言っても、大漢和の「雌」は13画なのに、ずいぶん元気に横画の起点が左に出てますね。
- うん。大漢和の明朝体を設計した石井茂吉の美意識(?)が呪いとなって戸籍統一文字やIPAmj明朝のおっぱい差へとつながっているのかどうかは、まあ、わからないんだけどね。
- 今回は、深い話なんだか、おっぱいって言いたかっただけなんだか、よくわかりませんでした。