Windows Vistaのjp90タグにおける「喩」の問題

字形セットとしては、Windows XPで利用可能だった122文字のJIS90字形に、'jp90' OpenType feature tagによりアクセスができるようになっています。

  • この122文字のリストには、「喩」が含まれている*1。そして、「喩」については、「JIS90字形」欄のグリフ(「人」形)は、「JIS90字形」ではない。逆に、「JIS2004字形」欄のグリフ(「入」形)のほうが「JIS90字形」である。


  • JIS X 0208の規格票における「喩」の例示字体は、JIS78とJIS83では「人」形、JIS90以降は「入」形。つまり、JIS78もJIS83も略字風の字体であったのが、JIS90で伝統的というか一般的な字体に直された例である。そして、JIS X 0213:2004では、「喩」の例示字体は変更されていない*2


  • 「喩」のXPグリフ(「人」形)は、本来はjp78タグまたはjp83タグで表現すべきものであるが、今回はjp78タグやjp83タグはサポートされないので、これもjp90タグで表現してしまおうということなのだろう。しかしそうすると、「喩」のデフォルトのグリフ(JIS90グリフ)にjp90タグ(JIS90グリフに切り換えるタグ)を適用すると非JIS90グリフに、という不思議なことになる。
  • 以下、Vistaから離れて、「喩」の話。Adobe-Japan1-2は、JIS83とJIS90の例示字体を区別しないシステムだった。このため、「喩」のデフォルトのグリフであるCID=4411には、フォントによって「人」形になったり「入」形になったりという揺れが存在した。一方、富士通文字セット(AddあるいはExpert)のCID=7984は明示的に「入」形であると考えられる。Adobe-Japan1-4では、JIS90の例示字体変更がサポートされ、CID=13526に明示的な「人」形の「喩」が追加された。

*1:「筵」も類似のケースだが、話が複雑になるのでここでは取り上げない。

*2:図は規格票の字形そのものではなく、小塚明朝で再現したもの。