Adobe-Japan1におけるキャロン付きの「d」「L」「l」「t」

  • キャロンまたはハーチェクはv字型の分音記号だが、「d」「L」「l」「t」に付く場合、アポストロフィとして組まれることが多いらしい。この差異は、Unicodeでは包摂されている(下図)。


  • 次の引用は、Unicode Standard 5.0の227ページより(以下、Unicode Standardからの引用は拙訳)。

分音記号の形状と位置にはかなりのバリエーションがあり、そのような差異をよく知らない読者を驚かせることがあるかもしれない。たとえばチェコ語組版では、U+010F LATIN SMALL LETTER D WITH CARONおよびU+0165 LATIN SMALL LETTER T WITH CARONはしばしば、キャロン(一般にはハーチェクとして知られる)ではなく、アポストロフィ付きのグリフによって描画される。(中略)スロヴァキア語では、この用法はU+013E LATIN SMALL LETTER L WITH CARONおよびU+013D LATIN CAPITAL LETTER L WITH CARONにも適用される。このようにアポストロフィを利用することで、文字のアセンダを超えることによる複数の行の衝突を回避することができ、結果としてよりよいタイポグラフィがもたらされる。タイプライタや手書きによる書類、あるいは教科書的・教育的資料では、ハーチェク付きのグリフが好まれる。

  • Unicode 2.0では、これらの文字はキャロン(ハーチェク)付きのグリフで例示されていたが、Unicode 3.0以降ではアポストロフィ付きのグリフに変更された。次の引用は、Unicode Standard 5.0の564ページより。オリジナルでは《》内は1文字。

U+010F LATIN SMALL LETTER D WITH CARONは、通常《キャロン付きd》ではなく《アポストロフィ付きd》で組まれる。このような例では、コードチャートには、より一般的なバリアントを、教科書的・原形的な形状よりも優先して掲示する。


  • では、Adobe-Japan1には「アポストロフィ付きd」は含まれていないのか。U+010Fに対応するCID=15774は、例示フォントにヒラギノ明朝を用いたAdobe-Japan1-5(TechNote #5146)では「キャロン付きd」。一方、例示フォントに小塚明朝を用いたAdobe-Japan1-6(TechNote #5078)では「アポストロフィ付きd」となっている(下図)。「L」「l」「t」についても同様。


  • つまり、Adobe-Japan1は「キャロン付きd/L/l/t」と「アポストロフィ付きd/L/l/t」を区別しておらず、どちらのグリフを採るかはフォントの実装依存ということのようだ。しかし、素朴な疑問として、これってAdobe-Japan1で区別しないようなレベルの差異ではないと思うのだが。