JIS X 0213とキャロン付きの「d」「L」「l」「t」

  • 前回のエントリの続き。Adobe-Japan1-5における「キャロン付きd/L/l/t」グリフのソースは、JIS X 0213である。下図は規格票附属書4の一部。3つの字形が掲載されているが、左のみが「文字」欄、中央と右は(参考であって規定の一部ではない)「字形例」欄。


  • JIS X 0213:2000の310〜311ページには、1-10-4(キャロン付きL)、1-10-15(キャロン付きL小文字)、1-10-47(キャロン付きD小文字)、1-10-20(キャロン付きT小文字)について、次のように記されている。

これらの図形文字は、この規格の国際規格との整合性を高めるため、ISO/IEC 8859-1(Latin 1)から採録している。欧米のタイポグラファは、これらの図形文字を、キャロン付きではなく、アポストロフィ付きとしてデザインすることが少なくないことから、この規格では、これらの図形文字では、キャロンとアポストロフィとをデザイン差とみなし、附属書4の字形例に示したように、同一面区点位置で表現できるものとしている。

  • 引用中の「ISO/IEC 8859-1(Latin 1)」は「ISO/IEC 8859-2(Latin 2)」の間違いだろう。下図は、JIS X 0213:2000に掲載されている解説表3に着色したもの。ISO/IEC 8859-2の符号表のグリフも、アポストロフィ付きではなくキャロン付きであることがわかる。


  • というようなことを踏まえると、日本語フォントの実装において、「キャロン付きd/L/l/t」と「アポストロフィ付きd/L/l/t」のどちらが望ましいかは、微妙なところだと思う。チェコ語やスロヴァキア語の組版に用いるのなら「アポストロフィ付き」なのだろうが、Mac OS Xの文字パレットにおいて「JIS X 0213の符号表」の表示にも用いられるヒラギノが「キャロン付き」を採用したのも理解できる。