InDesignの「CIDベースの文字組みを使用」とは何か

  • InDesign CS2以降には、「環境設定:組版」に「CIDベースの文字組みを使用」というオプションがある。が、わたしはこれが何だったのか定期的にわからなくなって調べ直すハメになるので、今回はややしつこくメモしてみることとした。ヘルプには、輝かしい火星語で次のように記されている。

Unicodeの代わりに使用されているフォントの字形を使用する正確なJIS X 4051文字組みクラスを決定するには、「CIDベースの文字組みを使用」を選択します。OpenTypeフォントを使用している場合に、このオプションが便利です。この機能では、AdobeJapan1-0〜AdobeJapan1-6のすべてのCIDフォントがサポートされています。Unicodeは、他のすべてのフォントで使用されます。

  • 要するに「CIDベースの文字組みを使用」をオンにすると、符号位置ではなくCIDに基づいて文字クラスが決定されるわけだが、オンとオフでは具体的にどう違うのか。けっこう複雑な話になるので、とりあえずASCII相当(Unicodeの「基本ラテン」ブロック)の文字(およびそれに対応する全角文字)に限定して検討してみよう。
  • 下図は、アルファベットの「A」について見たもの(以下の図はすべて「リュウミン Pr6 R」の動作に基づく)。「CIDベースの文字組みを使用」にチェックを入れた場合(左の列)、実際に表示されているグリフが全角であれば文字クラスは「その他の和字」、そうでなければ「欧文用文字」となる。


  • 一方、「CIDベースの文字組みを使用」がオフの場合(中央および右の列)、(OpenTypeタグによって指定された)実際の見た目にかかわらず、親字の符号位置に基づいて文字クラスが決定される。組み見本における色地付きの文字は、符号位置と直接対応していることを示す(以下同)。
  • 下図は、数字の「0」について見たもの。アルファベットの「A」と比較して、「その他の和字」が「全角数字」、「欧文用文字」が「半角数字」となっている以外は同じパターンを示している。


  • このように、「オンにした場合、全角グリフ以外の文字クラスは『欧文用文字』または『半角数字』となる」というのが最も基本的な動作だと考えてよいだろう。Unicodeの「基本ラテン」ブロックの文字では、U+0020の欧文間隔を除けば、「$」と「%」以外のすべてがこのパターンに一致する(下図)。以下の図において、Pはプロポーショナル、Hは半角、Fは全角グリフを、また、黒丸は符号位置との対応を表す。


  • ややわかりにくいかもしれないが、上図は、たとえば「!」や「?」であれば、マトリクス中の緑地のセルでは「欧文用文字」、紫地のセルでは「区切り約物」であることを示している。また、「その他の和字」は、今後紫地の文字クラスと区別する必要が出てくるためグレー地としておいたが、今回のエントリの範囲では、グレー地と紫地には違いはないと考えていただきたい。
  • 下図は、ドル記号「$」について見たもの。「CIDベースの文字組みを使用」がオンの場合(左の列)、全角グリフだけでなく、プロポーショナル・グリフと半角グリフの文字クラスも「前置省略記号」となる。


  • パーセント記号「%」については、ドル記号の「前置省略記号」を「後置省略記号」に置き換えたものとして、同じグループに分類することができる(下図)。


  • 今回検討の対象とした文字のなかで、「$」と「%」については、OpenTypeタグによる変更を一切加えていなくても「CIDベースの文字組みを使用」のオン/オフによって文字クラスが変わってくるという意味で、特に注意が必要となるだろう。