「CIDベースの文字組みを使用」と省略記号

  • 前回は、InDesignの「CIDベースの文字組みを使用」に関する挙動において、Unicodeの「基本ラテン」ブロックの文字のなかでは「$」と「%」が例外的な存在であることを見た。そこで今回は、他の前置省略記号、後置省略記号について検討してみようと思う。
  • 下図は、円記号について見たもの。「CIDベースの文字組みを使用」がオンの場合(左の列)、全角グリフだけでなく、プロポーショナル・グリフと半角グリフの文字クラスも「前置省略記号」となる。組み見本における色地付きの文字は、符号位置と直接対応していることを示す(以下同)。


  • 円記号のこのような振る舞いは、前回見たドル記号のものと同じ。以下の図において、Pはプロポーショナル、Hは半角、Fは全角グリフを、また、黒丸は符号位置との対応を表す。


  • ポンド記号の文字クラスは、符号位置、「CIDベースの文字組みを使用」のオン/オフ、グリフの幅にかかわらず、常に「前置省略記号」となる。円記号やドル記号とポンド記号とで挙動が異なる理由は不明。


  • ポンド記号と同様に、常に省略記号属性を保持している文字には、以下のようなものがある。


  • Adobeが公開している「文字組み設定の手引き」という資料によれば、InDesignの文字組みセットは、基本的にJIS X 4051:1995に基づいている。JIS X 4051:1995が規定している省略記号には、ここまでで既出のもの(ただし「℃」を除く)以外に前置省略記号の「№」があるが、これはInDesignではおそらく独自の判断により、「その他の和字」として扱われる。*1


  • 1996年に公開され、1998年にUnicodeに収録されたユーロ記号は、言うまでもなくJIS X 4051:1995では触れられてはいない。現行のJIS X 4051:2004は、ユーロ記号を前置省略記号としている。InDesignで「CIDベースの文字組みを使用」がオフの場合、ユーロ記号は「その他の和字」、オンの場合は「前置省略記号」として扱われる(下図)。デフォルトのグリフがプロポーショナルでありながら「その他の和字」となる点が珍しい。


  • ユーロ記号と同様、オフで「その他の和字」、オンで「省略記号」となる文字には、以下のようなものがある。*2


  • JIS X 4051:2004は「#」を前置省略記号としているが、前回見たように、InDesignでは「#」はアルファベットなどと同じ扱いとなる。


  • 「CIDベースの文字組みを使用」に関する話題でいちばん興味深いのは、たぶん括弧類だと思うが、次回あたり触れることができるだろうか。

*1:JIS X 4051:1995は、他に後置省略記号のU+2031 PER TEN THOUSAND SIGNについても規定しているが、これはAdobe-Japan1に含まれていない。

*2:組文字の後置省略記号は他にも多数あるが、省略。