メイリオの'jp78'サポートは間違っている

  • メイリオはJIS04基準フォント(JIS X 0213:2004の例示字体を参照して設計されたフォント)だが、'jp78'タグのサポートにおいて「JIS90基準フォント用のテーブル」をベースとしているものと思われ、その結果混乱が生じている。*1
  • 下図は、「JIS90基準フォントには不要だがJIS04基準フォントには必要な'jp78'置換」のリスト。これらすべてについて、メイリオでは'jp78'サポートが抜け落ちている(グリフは存在しても、置換テーブルに載っていない)。*2


  • また、「JIS X 0208:1983が第1水準・第2水準間で文字を入れ替えた22組」について、メイリオの'jp78'サポートには問題がある。
  • 下図は、Pr6Nフォント(JIS04基準フォント)における「22組44文字」の'jp78'サポート。第1水準(L1)欄と第2水準(L2)欄がデフォルトのグリフを、青矢印が'jp78'置換を、矢印の先の水色地が'jp78'グリフを示す。置換結果が「第1水準グリフと第2水準グリフの入れ替え」とは異なる例が6つ存在する。


  • 下図は、メイリオにおける「22組44文字」の'jp78'サポート。正しく置換されるのは、水色地の3つの例のみ。単純な「第1水準グリフと第2水準グリフの入れ替え」をサポートしていないのは、おそらく意図的な仕様なのだろうが、それだけでは説明できない。GID+7285、GID+14465、GID+7885(グレー地)への置換がサポートされていないほか、デフォルトのグリフではない(Unicodeの符号位置との直接の対応を持たない)GID+7885から「蝿」への置換(ピンク矢印)といった不思議な例も存在する。これらも「JIS90基準フォント用のテーブルをベースにしたことによる混乱」だと思われる。*3

*1:メイリオの'jp78'サポートの問題については、すでに安岡孝一さんが「VistaをXPの字体に戻すというjp90タグの罠」で指摘している。安岡さんは「JIS X 0208:1983の区点位置追加にともなう入れ替え4組」および「Ext(PC 98文字セット)に固有の8つのグリフ」についても「問題がある」例に含めているが、これらは(問題はあるにせよ)Adobe-Japan1フォントの「仕様」であると思われるので、今回のエントリでは触れなかった。その他、個別の話はいろいろあるのだが、今回は割愛。

*2:図の例のうち「灸」「粂」あたりは、メイリオでは区別しない方針だと思われるが、Pr6Nフォントの'jp78'サポートに含まれるものは、機械的にリストアップしておいた。

*3:InDesignでグリフパネルから'jp78'を適用した場合、'jp83'などのタグに対して「上書き」となるため、通常はGID+7885(U+8805の'jp83')から「蝿」への置換を目にすることはないだろうが、InDesignタグで「GID+7885の'jp78'」指定すると「蝿」になる。