小塚ProのGSUBテーブルが直っていない

  • 以前、モリサワPr5フォントやAdobeフォントの一部における'jp04'テーブルと'nlck'テーブルの不具合について指摘したことがある。その後モリサワPr5フォントの改訂(http://www.morisawa.co.jp/font/support/after/sup_067.html)を経て、事態は収束に向かうものと思われた。しかし、Adobe CS3/CS4に付属する小塚明朝Proと小塚ゴシックPro(バージョン4.00x)は、今もこの問題を引きずっている。
  • Adobe-Japan1フォントには、3種類の'jp04'テーブルが存在する。以下、これを便宜的に、導入された順にj1、j2、j3と呼ぶこととする*1。下図は、各フォントの'jp04'テーブルの推移を整理したもの。上から下が、ほぼ時系列順。黄色バック(j2とj3)は、問題のあるもの。ヒラギノモリサワのProは、リリース時期が2003年以前であり、'jp04'をサポートしていない(na欄)。大きな流れとしては、'jp04'テーブルの最初のバージョンであるj1には問題がなかったが、その後j2が登場し、これは多くの誤りを含むものだったのでj1に戻した……というかんじ。


  • ところが、小塚明朝Pro-VIの'jp04'テーブルがj2からj1に修正されたのとほぼ同じタイミングで、小塚明朝Proと小塚ゴシックPro(4.00x)は、なぜか独自のテーブルj3を採用する。私見だが、j3は「j2をあわてて直そうとして失敗したバージョン」であるように思える。j3の明らかな誤りは(j1との違いはこれだけではないのだが)、下図のとおり。小塚明朝Pro 4.001(j3)では、置換すべき「芦」が置換されず、置換すべきでない「靭」が置換される。


  • Adobe-Japan1フォントには、4種類の'nlck'テーブルが存在する。以下、これをn1、n2、n3、n4と呼ぶ。下図は、各フォントの'nlck'テーブルの推移を整理したもの。大きな流れとしては、'nlck'テーブルの最初のバージョンであるn1にはほぼ問題がなかったが、その後n2が登場し、これは多くの誤りを含むものだったので、新たにn4が導入された……というかんじ。私見だが、単にn1に戻すのではなく別のテーブルであるn4が導入された背景には、「n2の顔もちょっとは立てておきたい」的な意図がうかがえる気がする。


  • ところで、小塚明朝Pro-VIの'nlck'テーブルがn2からn4に修正されたのとほぼ同じタイミングで、小塚明朝Proと小塚ゴシックPro(4.00x)は、なぜか独自のテーブルn3を採用する。n3は間違っているわけではないが、n4との併存には、混乱を増す以外の意味はない。
  • そのようなわけで、小塚Pro 4.00xの'jp04'テーブルと'nlck'テーブルは、採用された理由もよくわからないが、いまだに生き残っている理由も謎である。以下は、関連するエントリ。

小塚明朝のバージョンによる'nlck'サポートの違い
小塚明朝のバージョンによる'jp04'サポートの違い
小塚明朝の'nlck'と'jp04'についてAdobeに聞いてみた
'nlck'テーブルの現状についてのまとめ

*1:j1にCID+21558、CID+21933、CID+22920、CID+21371、CID+21722を追加したもの(モリサワのPr6が採用)を別種のテーブルと見なすことも可能だが、このエントリでは、これもj1に含めて扱う。