OpenTypeフォントの'jp83'タグに関するメモ

  • 'jp83'タグは、JIS83の例示グリフを呼び出すものである。
  • もともとAdobe-Japan1は、JIS83を参照して設計されていた。しかしAdobe-Japan1のTechNote例示フォントには(JIS90の例示フォントである)平成明朝が使われおり、JIS83、JIS90の例示グリフのうちいずれを参照するかについては実装依存の側面があった。現在、Adobe-Japan1における標準のグリフは明示的にJIS90を参照しており、JIS83の例示グリフはCID=13408からCID=13636に収録されている。
  • グリフ集合のベースとなっているのは、JIS97委員会の調査により「第3次規格で字形の変更が行われた」とされた225文字(偉緯違厩餌衛延沿鉛翁芽雅慨概殻敢貫巌頑帰窮均傑穴健建鈷檎交公更校硬絞考購降拷罪使史姉謝邪収輯柔瞬舜楯松訟丈埴植職親遂据摂船総聡像誕恥兆眺聴跳庭廷艇桃逃派排輩班頒悲扉斐緋誹貧父葺分噴憤粉紛雰蔽便捧盆桝脈耶翼吏隣麟麗聯聾湾傅冓凛匕區雙喩囁圍墫姚娶媾嵎嶇巉巓弭徘惘愽懾扨拏攝搏擲敝晟枩柧楫椰榧橄檐氈氓渣漑滾漾燿珥琲瑟瓠甌癲礪磔禺稙窕糲絳緝縵翡聚聟聳聰聶腓膊膵臍菲蕕藕蜚蠶袞裘裴褫褻襪襯訝豕贅贏齎躑躡遒逎鄰酖酘酥酳酲醢醯醪醴醺鑷隘霽靠靱頌顳飃驅魍鯆鯡鯱鵈鷏鼈)。ここから「豕」を抜き、「逢害軌羮魘」を追加した229文字が、'jp83'タグ用のグリフ集合である。


  • Adobe-Japan1-4で'jp83'タグ用のグリフ集合229文字を定義したのはKen Lunde氏だが、JIS97の調査結果が公開される前からKen Lunde著『日本語情報処理』が、JIS90において「字形が微妙に変更された」としているのは、「偉緯違厩衛延沿鉛翁慨概殻敢頑帰窮均傑穴健建交公更校硬絞考降拷罪使史邪収瞬舜松訟丈埴職船総聡像誕恥兆眺聴跳庭廷艇桃逃排輩班頒悲扉斐緋誹貧父分粉紛雰便盆桝耶吏隣麗聯匕雙喩圍姚娶巉巓弭徘惘扨擲敝晟枩柧椰榧橄檐氈渣漑滾漾燿珥琲瓠癲磔窕緝縵翡聚聰聶腓膵菲蜚蠶袞裴褫褻襪襯訝贅贏躑躡鑷隘靠靱頌顳魍鯡鯱鵈」の145文字。
  • というわけで、「Kenさんたら区別が細かすぎ」と語られがちなAdobe-Japan1は、その細かさにおいて、JIS97委員会から強い影響を受けている。もちろんJIS97委員会は、Adobeがあれを(ほぼ)まるごとサポートするなどとは想像もしていなかったと思うが。
  • 'jp83'用の229文字は、「JIS90で変わった文字」であるから、そのまま'jp78'タグ用にも使われるものが多い。例外は「逢厩餌概扉蔽媾愽礪靠靱」。このうち「礪」のCID=13569は、'jp78'タグでも参照されるが、(JIS83で入れ替えられた文字なので)符号位置は異なる(詳しくは「JIS X 0208:1983が第1水準・第2水準間で文字を入れ替えた22組」を参照)。下図は'jp78'グリフ、'jp83'グリフ、標準(No Change)グリフの比較。


  • 違いがわかりにくいものもあるので、重ねて表示したのが下図。違いがない場合、グレー地で示した。


  • 上図を見ると、「蔽」は'jp83'グリフ(CID=13505)が用意されているにもかかわらず、標準のグリフ(CID=3603)との間に差がない。これについて、AdobeのTechNote「Adobe-Japan1-6 Character Collection for CID-Keyed Fonts」には、以下のように記されている。

The glyphs of CIDs 3603 (Supplement 0) and 13505 (Supplement 4) are the same using KozMinProVI-Light (Kozuka Mincho Pro-VI Light), but depending on the typeface design, they can be different.

  • 大意は「小塚明朝では区別していないが、書体設計に依存する問題なので、区別して実装してもいいですよ」といったところか。では、JIS X 0208の規格票例示字形はどうなっているかというと、下図のとおり。