角川新字源の旧字体をAdobe-Japan1で再現してみる

  • 常用漢字旧字体は何文字あるのか。「五百数十文字」と言う人もいれば、「約700文字」と言う人もいる。もちろん、字書によってもまちまちである。以前、角川新字源で旧字体を数えてみたところ、816文字あった。知る限りにおいて、「常用漢字旧字体の数」としては、この数字が最大値である。
  • 一方、常用漢字表において「明治以来行われてきた活字の字体とのつながりを示すために」括弧内に示された旧字体(康煕別掲字)だけを数えるなら、357文字。OpenTypeフォントの'trad'タグによってグリフが置換されるのは、常用漢字については(若干の例外はあるが)これだけである。
  • しかしAdobe-Japan1は、康煕別掲字以外にも数多くの旧字体を含んでおり、これらは'trad'タグによって呼び出されることはない。そこで、角川新字源の旧字体Adobe-Japan1でどの程度再現できるのか、少しだけ試してみた。
  • 新字源の「旧字体が併記されている文字(新字体)」のリストから、JIS X 0208の区点番号順に24文字を選び(図のno change欄)、これに対して一律に'trad'タグを適用した(trad欄)。'trad'タグを適用してもグリフに変化がなかった場合、グレー地で示した。'trad'タグが無効だった文字のうち、手動で新字源の旧字体に切り換えることが可能であった場合、それをaalt欄に示した。trad欄およびaalt欄では、JIS X 0208に含まれる文字を水色地で、JIS X 0213に含まれる文字をピンク地で、それ以外を黄色地で示した。手動でも新字源の旧字体が再現できなかった場合(または注釈が必要な場合)のみ、Shinjigen欄にスキャン画像を掲げた。


  • 「醫」(3番目の図)は、一応「酉」の右の接触の有無を区別しておいたが、新字源においてこれが有意な区別であるかどうかは不明。
  • 「印」(4番目の図)については、小塚明朝の標準のグリフがすでに新字源の「旧字体」と一致する。新字源の「新字体」(偏の縦線が下に出ない形)は欄外に掲げた。
  • 以上のわずかな例からも明らかなように、新字源の旧字体はかなりクセが強く、一般的な旧字組みに適したようなものではないし、わたしはこのエントリを通して「Adobe-Japan1は新字源の旧字体を再現できないからダメだ」というようなことを主張するつもりはまったくない。
  • ただ、aalt欄に掲げた手動で切り換えられる文字は、旧字組みでは利用したいところだし、現行の'trad'タグ(多くの人名用漢字旧字体になってくれないという問題もある)とは異なる「旧字組み用タグ」があってもよいのではないかとは思う。