リュウミンのヒゲ(筆押さえ)のロジック

  • 常用漢字のうち部分字体「八」を含む文字をリストアップし、'jp83'(または'jp78')タグを適用すると、小塚明朝やヒラギノはヒゲの付いた形になる。一方リュウミンの場合、部分字体「八」はもともとヒゲ付きで設計されているため、原則として'jp83'タグによって字形が変化することはない。下図は小塚明朝とリュウミンで、デフォルト(No Change)の字形を赤、'jp83'タグ適用後の字形を青で表示した上で重ね合わせたもの。双方の字形が一致しヒゲ付きである場合、水色地で示した。例外である「雰」については、「リュウミンのCID版とOTF版では漢字の形はどれくらい違うのか」でも書いたように謎。


  • 「八」そのものは、JIS X 0208の例示フォントである平成明朝でヒゲ付きに設計されており小塚明朝、ヒラギノリュウミンのいずれもデフォルトでヒゲ付きとなっている。Adobe-Japan1では、別に「ヒゲなしの八」が用意されているが、リュウミンはこれをサポートしていない(下図)。念のために断っておくと、ヒゲの扱いは書体設計におけるポリシーの一部であろうし、「サポートしていない」という表現にネガティブな含意は(これ以降も)ない。


  • 常用漢字のうち、えんにょうを含む文字に'jp83'タグを適用すると、小塚明朝やヒラギノはヒゲの付いた形になる。リュウミン常用漢字の「ヒゲ付きえんにょう」をサポートしていない。下図では、タグ適用前と適用後の字形が一致しヒゲなしである場合、ピンク地で示した。


  • 部分字体「八」とえんにょう以外では、「丈交使便史吏更校父硬絞」が'jp83'タグによるヒゲ付きグリフへの置換の対象となる。リュウミンはこのうち「父」のヒゲ付きグリフをサポートしていない。リュウミンの「父」はもともと(歴史的に)ヒゲのない形だったのだろうか。


  • 部分字体「斉」または「斎」を含む常用漢字「剤斉斎済」に対して、Adobe-Japan1では、旧字体である「劑齊齋濟」とは別に、新字体にヒゲを付けた形が用意されている。リュウミンはこの「ヒゲ付き新字体」をサポートしていない。


  • Adobe-Japan1では上記以外に、常用漢字「文紋蚊較隻」のヒゲ付きグリフが用意されている。



  • で、下図はえんにょうを含むもの。リュウミンの「廻鍵挺」には、もとからヒゲが付いていない。「鍵」などスペースがない場合にヒゲが省かれるのは不思議ではないが、その理屈では「廻」の例を説明できない。「廻鍵挺」は2004年9月に追加された人名用漢字だからという説も考えたが、2004年以前のCIDフォントでも「廻鍵挺」にはヒゲがないのでこの仮説は成立しない。結局のところ、リュウミンの表外字のえんにょうにおけるヒゲの有無の基準はわからない。


  • また、リュウミン常用漢字で「丈交使便史吏更校硬絞文紋蚊較隻」のヒゲ付きグリフをサポートしていながら、えんにょうに関してはヒゲなし固定である理由もよくわからない。