新常用漢字表試案が個別デザイン差を導入


  • 個別デザイン差は、表外漢字字体表でおなじみの例外規定である。何らかの理由があって「常用漢字として認める形」を他の文字よりもゆるく設定するということなのだが、文字コードがらみの事情を持つ「叱」はともかく*1、他の3文字については、わざわざ例外規定を設けて話を複雑にするほどのことか、ちょっと疑問。
  • 下図は、部分字体として「次」またはその仲間を有する常用漢字(候補)。「茨」「恣」「羨」の3文字が追加候補漢字で、「茨」だけが個別デザイン差の対象となる。以下の図では、白地が常用漢字(デザイン差の範囲内)、グレー地は字体差(常用漢字ではない)。緑枠の文字は、新常用漢字表試案で例示されているグリフを表す。図に用いたフォントは小塚明朝。Adobe-Japan1で表現できないグリフは空欄とした。


  • 「茨」が個別デザイン差の対象であり、「恣」がそうでない理由は、「茨A」の用いられる頻度が比較的高いからだろうか*2
  • 下図は、部分字体「牙」を持つ常用漢字(候補)。「牙」のみが追加候補漢字であり、個別デザイン差の対象となる。


  • 下図は、部分字体「ヰ」を持つ常用漢字(候補)。「韓」のみが追加候補漢字であり、個別デザイン差の対象となる。この字についてはわたしもパブリックコメントで突っ込んだのだけれど、そこでは「AとBを字体差と見なすような記述はおかしい」と言ったのであって、(画数の異なる)Cも含めてデザイン差と見なすべきだとは言っていない(「改定常用漢字表」に関する試案の「韓」と「稽」)。

*1:小形さんの「第39回漢字小委員会で「叱」等の字体問題が話題に」とそのリンク先を参照。

*2:このあたりの話についてはworks014さん(なんでやねんDTP)の「常用漢字の部分字形_「次」と「祭」」および「再び「次」について」を参照。