Pr6フォントとPr6Nフォントはどこが違うのか

  • Pr6Nフォントとは、一言で言えば「JIS X 0213:2004の例示グリフを標準としたAdobe-Japan1-6フォント」である。一方、Pr6フォントの定義はけっこうやっかいなので後回しにするが、要するにPr6NフォントとPr6フォントの差分が'jp04'テーブルなのだと考えて差しつかえない。
  • Pr6フォントおよびPr6Nフォントの'jp04'テーブルの内訳は、「JIS X 0213:2004で例示字形を変更された168文字」マイナス「字形の変更が非常に微細な8文字」プラス「若干の追加文字」である。
  • JIS X 0213:2004で例示字形を変更された168文字」と「字形の変更が非常に微細な8文字」の全体像については、以前のエントリ(OpenTypeフォントの'nlck'タグについて詳しく書いてみる)またはAdobeの資料(JIS2004とJIS90との文字の形の対照表)を参照。この「168文字マイナス8文字」の160文字については、単純に「Pr6フォントはJIS90グリフ、Pr6NフォントはJIS04グリフ」と考えてよい。下図は、160文字のうちCID順で先頭から8文字を、JIS X 0208:1990/1997、JIS X 0213:2000、JIS X 0213:2004の規格票例示グリフと比較したもの。Pr6のグリフは水色地で、Pr6Nのグリフはピンク地で示した。これ以外の9文字目から160字目についても、水色地とピンク地の描くパターンは変わらない。


  • 160文字以外の追加文字は9文字あり、この9文字は3つのグループに分類することができる。最初のグループ(と言ってもメンバーは1文字だけだが)は「摯」。これについては以前に書いたことがあるので引用しておく。引用中の「'nlck'」は「'nlck'および'jp04'」と置き換えることが可能。

「摯」は、国語審議会が平成明朝の字形を変更した文字(JIS X 0213:2004が例示字形を変更した文字)ではない。Adobe-Japan1-5において表外漢字字体表の例示字形をサポートするための作業が行われた際、表外漢字字体表の「摯(平成明朝のCID=5020)」とAdobe-Japan1のテクニカル・ノートの例示字形(小塚明朝のCID=5020)に若干の差異が発見されたために、「表外漢字字体表の『摯』」をCID=20264に追加し、'nlck'用グリフ集合に含めたものと思われる。そのようなわけでCID=20264は、JIS X 0208:1990/1997の例示グリフでありながら'nlck'タグではじめて参照されるという珍しいケースとなっている。

  • 2番目のグループは、U+FA40、U+FA20、U+8B7Fの3文字。これらについては、JIS X 0213:2000/2004の例示字形とAdobe-Japan1のテクニカル・ノートの例示字形に差異が発見されたために、Adobe-Japan1-6の策定にあたって新たに'jp04'グリフが追加されたものである。これらの文字はJIS X 0208には含まれていない(下図)。


  • 3番目のグループは、上図下方の5文字。これらは、Adobe-Japan1-6の策定後に、標準グリフよりも'hojo'グリフのほうがJIS X 0213:2000/2004の例示字形に近いことが発見されたものであると思われる。
  • そのようなわけで、追加9文字に関しては、Pr6のグリフは「JIS90グリフ」でも「JIS2000グリフ」でもない。Pr6フォントの標準グリフに名前を付けるなら、そのまま「Pr6標準グリフ」とでも呼ぶしかない気がするが、「Pr6」という用語は「Pr6とPr6Nの総称」として使われることもありそうだし、どうもすっきりしない。