Unicodeにマルバツのバツはあるのか

たとえば「○か×か」というテキストをヒラギノで表示した際、「×」だけが小さく見えて困惑したといった経験を、多くのMac OS Xユーザが持っていると思う。これは、ヒラギノがU+00D7 MULTIPLICATION SIGN(乗算記号)をプロポーショナルでデザインしているためである。

  • では、「マルバツバツ」を表現したいとき、より適切な方法は用意されているのだろうか。Unicodeには、明示的な「マルバツバツ」は含まれていない。U+2573 BOX DRAWINGS LIGHT DIAGONAL CROSSはバツと言えなくもないが、「BOX DRAWINGS」は罫線素片であってセマンティクス的にもバツ印とはやや遠いし、形もUnicodeの符号表例示字形を見る限りでは「○」と釣り合うようなものではない(下図)。


  • しかしAdobe-Japan1-xは、CID=8263にバツらしきものを含んでおり(下図)、これがUnicodeのU+2573 BOX DRAWINGS LIGHT DIAGONAL CROSSに対応している。したがって、明確に規定されているわけではないが、日本語フォントの場合、U+2573がバツとしてデザインされている可能性がある。


  • 設計思想がわかりやすいように、太めのヒラギノ角ゴ Pro W6でCID=186(プロポーショナルの乗算記号)、CID=695(全角の乗算記号)、CID=8263(U+2573 BOX DRAWINGS LIGHT DIAGONAL CROSS)、CID=723(U+25CB WHITE CIRCLE)を表示してみた。


  • 図からわかるように、ヒラギノの場合「バツはU+2573」と考えてよさそうである。わたしのMac OS Xにインストールされている日本語フォントのなかでは、小塚書体やリュウミンも同様。一方、MS書体では、U+2573はUnicodeの符号表のものに近い字形となっている。
  • 伊坂幸太郎『魔王』(本文書体はヒラギノ明朝)で、以下のようにCID=186をバツとして使っている箇所*1を見かけた記念エントリ。

*1:図はスキャンではなく適当に再現したもの