Adobe-Japan1フォントにおける'jp90'タグと'jp04'タグの非対称性

  • JIS04基準フォントの'jp90'タグとJIS90基準フォントの'jp04'タグは、ほぼ裏表の関係にある。しかし、完全に対称なわけではない。
  • 'jp90'タグでは、JIS X 0213:2004で例示字形を変更された168文字から「Adobe-Japan1では変更前・変更後の違いが区別されない8文字」を除いた160文字が置換の対象となる(下図)。



  • 'jp04'タグでは、上記の160文字の('jp90'タグとは逆方向の)置換に加え、下図に示した9文字の置換が行われる。


  • このうち「摯」が'jp90'タグの置換対象ではない理由は、JIS X 0208:1990における「摯」の規格票例示字形が、JIS90基準フォントのデフォルトのグリフ(CID=5020)よりもJIS04基準フォントのデフォルトのグリフ(CID=20264)に近いため。また、他の8文字が'jp90'タグの置換対象ではない理由は、JIS X 0208に含まれない文字であるため。当然のことを書いているようだが、'jp90'タグが「JIS90基準フォントのデフォルトのグリフに戻すタグ」ではなく「JIS X 0208:1990の規格票を参照するタグ」として機能することを確認しておきたい。
  • JIS04基準フォントでは、'jp83'タグで('jp78'と'expt'でもそうだが)、「摯」のCID=20264がCID=5020に置換される。しかし、JIS X 0208:1997の参考表「各実装字形差一覧」を見た限りでは、「摯」のJIS X 0208:1983における規格票例示字体はCID=20264のほうであろうと思われる。ただ、この置換を追加しておかないと、JIS90基準フォントの'jp83'タグと不整合が生じる。もともとグリフの違い自体が問題にするまでもないものだし、既存のGSUBテーブルの変更を避けてJIS04基準フォントの'jp83'テーブルにCID=20264→CID=5020置換を追加するという判断は妥当なものだろう。
  • 次のように言うことができるかもしれない。JIS04基準フォントの'jp90'タグは「JIS90基準フォントのデフォルトのグリフ」ではなくJIS X 0208:1990の規格票を参照する。一方、JIS04基準フォントの'jp83'タグはJIS X 0208:1983の規格票ではなく「JIS90基準フォントの'jp83'グリフ」を参照する。