山括弧と仏語引用符と不等号の混乱

  • 日本語組版で用いる山括弧、フランス語の引用符、そして不等号の形は、よく似ている。フランス語の引用符を含めて「山括弧」と呼ぶこともあるが、このエントリでは、日本語組版で用いる(シングルとダブルの)山括弧のみを「山括弧」と呼ぶこととする。また、フランス語の引用符の呼称としては「ギュメ」が一般的だろうが、以下、シングルとダブルをまとめて「仏語引用符」と呼ぶ。Unicodeに含まれる(形の似た)不等号、仏語引用符、山括弧は、下図のとおり。図に用いたフォントはリュウミンPr6。


  • 下図はAdobe-Japan1の視点から、不等号、仏語引用符、山括弧のグリフを、プロポーショナル、半角、全角に分類したもの。煩雑にならないよう、起こしの括弧(に似ている)側のグリフだけを示した。仏語引用符と山括弧は別の系統としたが、まとめて考えることも不可能ではないという意味で、補助線で結んだ。


  • これらのグリフとUnicodeの符号位置との対応を示したのが、下図。グレー地のグリフは、Unicodeの符号位置と直接の対応を持たないもの。


  • 下図は、プロポーショナル(pwid)、半角(hwid)、全角(fwid)タグによるグリフ置換の結果。黄色地はタグなし(デフォルト)のグリフ。タグを付けても置換されない場合、(InDesignではデフォルトのグリフが表示されるが)図では空欄とした。U+00ABについては、リュウミンPr6とPr6Nで動作が異なるので、Pr6Nの結果を別に示した。


  • 不等号の置換結果については、特筆すべき点はない。ややこしいのは、山括弧と仏語引用符の関係である。山括弧のプロポーショナル・グリフは仏語引用符、仏語引用符の全角グリフは山括弧だが、山括弧(シングル)の半角グリフがCID+506(半角山括弧)であるのに対して、仏語シングル引用符の半角グリフはCID+295(半角不等号)となる(下図)。


  • ダブルの形状の場合、「不等号(MUCH LESS-THAN)の半角グリフ」は存在しない。このためリュウミンPr6では、U+00AB(仏語二重引用符)に半角タグを付けても置換されない。一方リュウミンPr6Nでは、U+00ABに半角タグを付けるとCID+508(半角二重山括弧)となる(下図)。


  • ダブルの形状だけを見れば、リュウミンPr6Nが採用している(より新しい)テーブルのほうがシンプルだが、その一方で「シングルとダブルの振る舞いの違い」という要素(そしてフォントによる違いという要素)が加わっており、いずれにせよ非常にわかりにくいことになっている。